テープ起こしは、古代文明時代からすでにあったと言われています。
もちろん当時はテープレコーダーはありませんから、口述されたものを記憶したりして、後から文字に起こしていたのです。
古代の話ですから、現代のようにしっかりと、話した内容に忠実なテープ起こしではなく、重要な部分の要約したり一部を抜き出したりした簡単なものであったのだろうと思います。
文化が発達して、単語だけの言語がだんだんと文章化されていき、文字を記録できる紙などが使われるようになった時代を起源として文章の文字化が可能になりました。
録音が出来る機械がまだ無かった時代は、人が普通に話す発話速度で同時にそれを聞きながら文字化していくのは困難であったため、事後に話を想起して大切な部分をまとめたり、印象に残った内容で原稿が作られていたようです。
でも、これでは発言された内容の完全な記録という意味では困難でしたでしょうし、故意にその内容を改ざんされることも少なくありませんでした。
1600年代になると、話者が話すと同時に書き起こすという「速記」が考案されました。それが次第にブラッシュアップされ、話者の話した内容を同時に正確に書き起こすことが可能になりました。
1867年にはアメリカで「タイプライターが発明」実用化されました。これにより従来の手書きの文字起こしよりも速く文字を起こすことが可能になったのです。当時の速記やタイピングによる文字起こし作業は、扱える者も限られており、高度なスキルが必要な作業でした。
そのためテープ起こしのスキル習得には、官公庁や資本力のある企業など、限られたところでしか技術者を養成することが出来ませんでした。
1877年、テープ起こしにおいて、エポックメーキングな出来事が起こりました。
トーマス・エジソンが蝋管式レコードを発明したのです。この発明により、話し手が発言した内容はすべて忠実に記録が出来るようになったのです。
1923年にはコロムビア・グラフォフォン社から蝋管を使用した事務用の録音機「ディクタフォン」が発売されました。
ディクタフォンはタイプライターを使った文字起こしを想定して作られた録音機で、タイピングスキルがあまり無い人でも繰り返し再生することで正確な文字起こしが出来るようになりました。
ディクタフォンのウイークポイントとしては、蝋管メンテナンスに手間がかかり、再利用回数も限られ、録音できる時間も短く、使いづらいものでした。
1936年に、ドイツのAEG社によりプラスチックに磁気材料を塗布した「テープレコーダー」が発明されました。
そしてその後、一般向けにテープレコーダーが発売され、戦後には世界的にテープレコーダーが利用されるようになりました。
テープレコーダーはディクタフォンよりに比べて、録音時間も飛躍的に長くなり、古いデータを消去して新しいデータを繰り返し録音できるようになりました。
そして1940年代以降は会話を録音するためのメインストリームのツールとなったのです。
現在のテープ起こしは、誰もが持っているスマホやICレコーダーで簡単にかつ高音質で録音できて、録音データはMP3やWAVなどの電子ファイルに保存されるようになりました。
テープ起こしの語源となった磁気式のオープンリールは少なくなったものの磁気式のカセットテープはまだ存在していますが、もう過去のものになろうとしています。